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行方不明者がいる場合の遺産分割協議の方法
相続が開始すると、被相続人の遺言書がある場合は遺言書に従い相続が行われ、遺言書が無い場合は法定相続分に従い、その法定相続分のまま相続するかまたは相続人全員で遺産分割協議を行います。
ただ、法定相続分通りに相続をしてしまうと、金銭だけなら問題ありませんが、不動産や動産などがある場合は、全ての相続財産が法定相続分通りに分割されてしまうため、その後の手続きや管理が非常に面倒になってしまいます。そういった理由から、多くの場合遺産分割協議を行います。
遺産分割協議は相続人全員の同意がない限り、有効になりません。すなわち相続人の1人でも遺産分割協議に同意しない場合はその遺産分割の効力は発生しません。また、遺産分割協議に相続人が参加してなかった場合も、その遺産分割協議は無効となります。たった1人相続人がかけていた場合でも、その遺産分割協議は当然認められません。
問題となるのは相続人の中に行方不明の者がいる場合です。この場合の行方不明とは音信不通で、どこにいるのかが分からないケースも含みます。たとえ行方が分からない相続人がいたとしても、遺産分割協議は相続人全員で行われなくてはいけません。
こういった場合はどうするのか。民法では2つの方法が決められています。
まず一つ目の方法が、行方が分からない相続人の代わりを家庭裁判所に選任してもらう不在者財産管理人の制度で(民法25条)、不在者財産管理人に相続人の代わりとして遺産分割協議に参加してもらいます。不在者財産管理人とは、財産を管理する者がいなくなった時に利害関係人(相続人等)または、検察官が家庭裁判所に請求して財産管理人を選任してもらうことです。
不在者財産管理人制度は相続以外にも使われている制度です。この場合の不在とは、容易には見つからない、容易には戻る見込みのない場合です。ただ単に不在の場合などは認められません。
ただ、不在者財産管理人はあくまで管理行為(=保存行為・民法103条)のみしかできません。遺産分割協議は相続財産の取得に関する協議なので、不在者財産管理人の権限外の行為となります(民法28条、103条)。
不在者財産管理人が権限外の行為をする場合は家庭裁判所の許可が必要となりますので、管理人の選任の請求と共に、別途遺産分割協議の参加の許可も受けておく必要があります。なお、許可を受けていても不在の相続人に不利益になる遺産分割は特別な事情などない限りは裁判所に認めてもらえません。
不在者財産管理人の選任の申し立てがなされると、家庭裁判所は申立書や不在の事実を裏付ける資料を調査し、申立人から事情を聴き、不在者の親族に照会したりし、不在であるかを確認します。
もう1つの方法が、失踪宣告の制度です。この失踪宣告は不在者財産管理人の選任より強力な制度で、効果が発生すると行方の分からない相続人は死亡したものとみなされます。
失踪宣告には、①普通失踪と②特別失踪があります。
普通失踪では7年間生死がわからない場合に失踪宣告の申立てができるようになり、失踪宣告の申立てが認められると7年間の期間が満了した日が死亡した日とみなされます。
特別失踪とは震災や戦争、船の沈没などで生死が分からない場合に申立てるもので、危難が去った時から1年間が経過しても生死が分からない時に申立てができ、危難が去った時に死亡したものとみなされます。
失踪宣告の申立てができる者は利害関係人(相続人等)だけであり、検察は含まれません。申立てが行われると親族などに対して行方不明者の調査をし、また官報や裁判所の掲示板に行方不明者は届け出をするように催告がなされます。
失踪宣告が認められると、死亡したものとみなされますが、法律上みなされるだけで、実際は生きている可能性もあります。また、行方不明者が帰ってきたとしても、失踪宣告を取り消さない限りは法律上は死亡したものとして扱われます。
失踪宣告では死亡とみなされるため、その行方不明者は相続人の地位を失います。つまり、失踪宣告の時期と相続開始の時期の関係によって相続の形が変化します。
失踪宣告は死亡とみなされる強力な効果が発生しますので、期間の要件など不在者財産管理人の選任と違い要件等が厳しいものとなっています。
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