成年後見制度とは(法定後見・任意後見)
判断能力が低下した人を守る2つの制度/法定後見・任意後見
成年後見制度とは、認知症や精神障害、はたまた知的障害などを原因として判断能力が低下した方々を支援したり、財産を管理したりする仕組みのことで、「法定後見制度」と「任意後見制度」の2つに分けられます。
認知症になる高齢者も増えている昨今(厚生労働省のデータによると、2010年の段階で既に65歳以上の高齢者のうち、8-10%にあたる242万人程度の方が認知症であり、今後さらに、高齢者人口そのものの増加も相まって、2020年までに325万人まで増加するとされます)、このような制度は他人事ではなく、たとえ現段階で判断能力を有する場合であっても、将来のリスクに備えることは大切になります。
まずは、制度の概要から。冒頭の通り、成年後見制度は一般の方に比べて判断能力が低下している方を保護することを目的としています。
法定後見制度と任意後見制度で詳細に差異はありますが、どちらにも成年後見人という、本人(成年被後見人)の代わりとなる人が付き、本人に代わって財産を管理したり必要な契約を結んだりする形で意思能力が低下した人を保護・支援します。
成年後見人の仕事の範囲は、あくまで財産の管理や売買契約などの法律行為に関するものであり、食事の世話などを行う介護者とは異なります。
法定後見制度とは、既に意思能力が低下している方の為に、家庭裁判所の審判によって始まる成年後見制度です。(後に詳しく述べますが、任意後見制度は現段階では判断能力がある人が任意で行う契約であり、この点で法定後見制度と異なります。)
法定後見制度は、判断能力の低下具合によって「後見(判断能力を欠く)」「保佐(判断能力が著しく不十分)」「補助(判断能力が不十分)」の三段階に分けられ、それぞれ保護される範囲も異なってきますが、少し複雑な話になるので、本記事では「後見」について重点を置いて記述します。
◇法律行為と法定後見人
買ったり家を借りたりするなど、一定の法律関係を生む行為を法律行為と言いますが、法律行為を行うためには原則として意思能力が必要となります。
後見の要素である判断能力は、意思能力と似たような意味合いであり、これを欠く本人は、単独で完全な法律行為を行うことができません。
悪い人の口車に乗せられて、必要のないものを高い値段で買わされてしまうことを防ぐなど、本人を保護してあげる必要があるためです。
ただし、一切の法律行為を行うことができないとなると、逆に不具合も生まれてしまいます。
そこで、本人や利害関係人の申し立てにより家庭裁判所が成年後見人を選任し、財産管理についての全般的な代理権や取消権を与えることで本人の代わりに法律行為を行わさせようというのが、法定後見制度の目的です。
成年後見人の関与なく本人が行った法律行為は、日常生活に関する行為以外のものであれば、取り消すことができます。
◇法定後見の始め方
法定後見を開始するには、本人の住所地を管轄する家庭裁判所に対して、本人、配偶者、四親等内の親族が申し立てる必要があります。
申し立ての際には、申立書、成年後見用の診断書、本人の戸籍と手数料などが必要となります。申し立て後は、必要により都度審問・調査・鑑定が行われ、最終的に審判により家庭裁判所が成年後見人を選任します。
家庭裁判所が最も適任だと考える者を選任するため、申立ての際に挙げられた候補者以外の者(弁護士、司法書士、税理士等の専門家など)が選任されることがあります。
法定後見人は、本人に代わって法律行為を行う権限が与えられる一方、家庭裁判所に対する報告義務や一定の行動が制限されるなど、厳しい規制もあり、成年後見人による権利の濫用の防止が図られています。
◇法定後見人の任期
通常、法定後見の開始には一定のきっかけがあるものと思われますが(土地の売買や遺産分割協議に際してなど)、その当初の目的が果たされたとしても、後見が終わるわけではありません。
本人の能力が回復したり、亡くなったりするまではずっと保護が続くことになります。
任意後見制度とは、本人に代わって法律行為をしてくれる人と任意後見契約を結ぶことで始まる後見です。認知症などで実際に判断能力の低下が認められなければ利用できない法定後見制度とは異なり、現在判断能力を有する人が、契約を結ぶことにより将来のリスクに備えることができます。
誰と契約を結ぶかについては、本人の自由であり、特定の資格者に制限されてはいません。信頼できる人間であることが一番重要な要素です。仮に身近な人に適任者がいない場合は、司法書士会や弁護士会などの専門職団体に問い合わせれば、生業として任意後見を行っている人を教えてくれます。
家庭裁判所によって後見人が選任される法定後見制度とは異なり、本人の望む人が就任することは任意後見制度のメリットと言えるでしょう。
任意後見契約を結んでいれば本人の意思能力がなくなっても、後見人となる側の人間から家庭裁判所で任意後見人の選任の申し立てをすることができるため、任意後見契約を結ぶことは選択肢の一つになります。
最終的には、本人と契約した任意後見人が本人の代わりとなり、家庭裁判所により選任される任意後見監督人がその後見人の監督を行うことで、後見人の権利濫用防止と本人の保護が図られます。
◇任意後見の始め方
任意後見の契約を結ぶには、必ず公正証書によらなければなりません。
そのため、公証役場に出向くことが必要となり、その際、公正証書作成の基本手数料(1万1000円)をはじめとして、一定の手数料がかかります。
その後、実際に意思能力が低下してサポートが必要となったときに家庭裁判所に申し立て、審判によって任意後見監督人を選んでもらうことで任意後見が始まります。
◇任意後見契約の内容
任意後見契約の内容は自由であり、本人を保護する範囲や報酬を自由に定めることができます。
判断能力が低下してからであれば本人の希望を反映することは難しいですが、元気なうちに契約を結ぶことで柔軟な対応ができることも、任意後見のメリットと言えるでしょう。
ただし、任意後見人には法定後見人とは異なり取消権は認められていないことに注意が必要となります。例えば、本人が不要な壺を買ったしまった場合であっても、任意後見人がその売買契約を取り消すことはできません。
・意思能力が低下した人を保護する成年後見制度には、法定後見と任意後見がある。
・法定後見は、後見人に法律上で権限が認められており、本人を手厚く保護できる。一方、後見、保佐、補助という段階が設けられているとはいえ、任意後見に比べると柔軟性に欠け、本人の意思は反映されない。
・任意後見は、自由な内容で契約を結ぶことができ、本人の意思を反映させやすい。ただし、基本的に契約によらずに行うことができる行為はなく、取消権も認められていない。
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