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遺産分割協議後に相続財産が発見されたら

もし協議成立後に財産が見つかったらどうすればいいのか

後日相続財産が見つかることはあるのか

遺産分割協議をした後、相続人が知らなかった財産が新たに見つかる場合があります。たとえ相続手続きを専門家に依頼した場合であっても、彼らは大抵の場合遺産を探し出す専門家ではないので、見つけることができる財産の範囲には限界があり、このようなことが十分に考えられます。
(例えば、特定の銀行に預金口座があることが分かっている場合、その銀行については全国の支店の口座を調べることができるのですが、全く別の銀行についてはそうはいかず、しらみつぶしに調べ上げることになります。)

新たな相続財産を発見した場合、これはつまり、遺産の一部だけを分割してしまった場合と置き換えられますが、このような場合の対処法については明確な条文はありません。そこで、過去の判例等を参考にすることになるのですが、これらによると、その時の状況によりとるべき対応が変わってきます。


◇パターン1
(新たに見つかった財産が、相続財産全体の中において重要なものでない場合)
遺産分割協議後に相続財産が発見された場合、基本的には、その見つかった財産のみについて新たな遺産分割協議を行うことが可能です。
実際に、「最初に行われた遺産分割が一部についてのみだったとしても、新たに見つかった財産の分配によって相続人間の公平を図ることができるのであれば、最初の遺産分割を無効とする必要はない」という趣旨の判例があり、パターン2との関係で難しい線引きではありますが、財産のすべてを把握せずに行った遺産分割協議でも必ずしも無効となることはなく、新たな財産のみについて遺産分割協議を行うことができるとの解釈に繋がります。
なお、パターン1においても、相続人全員の合意により、全ての相続財産について遺産分割協議をやり直すことは可能です。


◇パターン2
(新たに見つかった財産が、相続財産全体の中において重要なのと評価される場合)
新たに見つかった財産が相続財産の中でも重要なものであるとき、パターン1とは異なり、その財産のみについて新たに遺産分割協議を行うことができない場合があります。これはつまり、第一の遺産分割協議の際にその財産があることを知っていたならば、その様な内容の協議とはなっていない状況においては、最初の協議が無効とされてしまう可能性があり得るためです。
実際に、相続人の一人が相続財産の一部を隠したまま行われた遺産分割協議の有効性が争われた裁判において、「1回目の遺産分割協議書にほとんどの相続財産が記載されているものと信じて協議を行った場合、この意思表示には要素の錯誤があり、無効であるということができる。」という趣旨の判断がなされています。(東京地判平27・4・22)
ただ、パターン2においても、相続人全員の合意があるのであれば、新たに見つかった相続財産だけの分割が可能だと考えられます。結局のところ、相続人の全員の意思がしっかりと遺産分割協議に反映されているかどうかが一番重要なポイントだと言えます。


◇パターン3
(既に行った遺産分割協議書に、新たに見つかった財産の取扱いを定めている場合)
以上のどちらのパターンにおいても、結局のところ再度遺産分割協議を行わなければいけないことに変わりはなく、大変に手間がかかります。
そこで、新たに財産が見つかった場合に備えて、最初の遺産分割協議書の中に対応する文言を定めておく方法があります。例えば、「本協議書に記載なき遺産並びに後日判明した遺産については、相続人○○が相続し、または承継する。」といった具合です。この場合、新たに発見された財産についてその指定に従うことになります。

相続財産をどう把握するのか

これらの対応方法を踏まえると、公平な相続のために、相続対策として遺産分割協議の対象となる財産を漏れなく把握しておくに越したことはありません。

そのためには、相続開始前から、被相続人の財産を分かりやすく記録し、定期的に見直すなどの管理を行うことが望ましいと言えます。負債についても同様です。相続開始後にこれらを全て探し出すのは、一部の手続きに期限が設けられていることも併せて、非常に大変な作業です。

とはいえ、被相続人に対して相続の話題を切り出すことは、心情的に易しいものではないでしょう。たとえ一度に切り出しにくい場合でも、日常的なコミュニケーションのなかで少しずつこれらの理解を深めてもらうことが大事です。

遺言を書いてもらうことも非常に有効な対策になりますので、ある程度相続に対する理解が生まれたところで、専門家へ一緒に相談に行くというのも一つの手段でしょう。
専門家との会話が相続に対する思い腰を上げる契機につながるかもしれません。



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