準正とは
一定の要件のもと非嫡出子が嫡出子の身分を取得する制度
準正とは、一定の要件のもと、非嫡出子が嫡出子の身分を取得する制度です。
法律上、子供という概念は実子と養子で区別され、実子の中でさらに嫡出子と非嫡出子に区別されます。嫡出子と非嫡出子を簡単に定義すると、嫡出子は法律上の婚姻関係にある夫婦に生まれた子供であり、非嫡出子は婚姻関係にない男女に生まれた子供です。
非嫡出子については、母親との関係では、その母親が出産したという事実によって相続権が認められますが、事実上の父親との関係では、当然には相続関係が認められません。非嫡出子は、戸籍上、父親がいないという状態になってしまうため、相続を認めるだけのはっきりとした根拠がないためです。
この事実上の父親との関係で法律上の親子関係を認めるために、「認知」という制度があります。この認知により、非嫡出子にも父親との関係で相続権が認められることとなります。
さらに、この非嫡出子を、嫡出子として認めてあげようという制度が今回解説する「準正」という制度です。
実は、一昔前までは、父親の相続において、嫡出子と(認知された)非嫡出子の間に相続分の差異があり、この準正という制度は非常に重要なものでした。
というのも、平成25年に民法が改正される前までは非嫡出子には嫡出子の半分だけの法定相続分しか認められていなかったのです。
ただ、「この差別は合理的ではない」というひと悶着があった末、この異なる法定相続分を定めた条文が違憲判決を受けたため、その後両者に平等の相続分が認められることとなりました。
準正は、
1.事実上の父親が、非嫡出子を認知すること
2.事実上の父親と、母親が婚姻をすること
という二つの要件が揃うことで認められます。これらが揃いさえすればよく、順番はどちらが先でも構いません。
もともと、婚姻中の両親から生まれていれば嫡出子の身分を取得できたのだから、その後に「婚姻」と「親子関係の発生(出産、認知)」という事件が時期をずらして発生した場合でも、子供に嫡出子の身分を認めてあげてもよいのではないかという発想が、準正の基礎となっています。
さて、父親が非嫡出子を認知した後(1の要件)、父母が婚姻すること(2の要件)で認められる準正を「婚姻準正」と言います。つまり認知先行型です。
【民法第789条1項:父が認知した子は、その父母の婚姻によって嫡出子の身分を取得する。】
逆に、婚姻先行型、つまり父母が婚姻した後(2の要件)、父親が非嫡出子を認知すること(1の要件)で認められる準正を「認知準正」と言います。婚姻準正については、嫡出子の身分を取得した子が父母と同じ戸籍に入る為には、入籍の届出が必要となります。
【民法第789条2項:婚姻中父母が認知した子は、その認知の時から、嫡出子の身分を取得する。】
これらをまとめると、婚姻準正は婚姻により、認知準正は認知により準正が認められることとなります。準正の効果が発生する時期については、婚姻準正については婚姻時、つまり要件が揃ったときが一般的となっています。一方、認知準正については「認知の時から(=要件が揃ったとき)」と条文にあるにも関わらず諸説あるので注意が必要です。
上記の民法第789条には3項目があり、子が既に死亡していた場合であっても準正の効果が生じるとしています。
例えば、父が子を認知した後に子が亡くなり、その後父母が婚姻した場合でも準正の効果は生じます。さらにいうと、条件次第では亡くなった子を認知することもできるため、婚姻準正・認知準正いずれのパターン置いても、子の死亡により準正が起こりえます。
さて、ついでではありますが、父母が亡くなった場合にも準正となることがあるか考えてみましょう。
まずは母親の死亡から。これについては、婚姻(1の要件)についてはともかく、認知(2の要件)には影響しないため、この出生→父母の婚姻→母親の死亡→父親の認知、と要件が揃い、認知準正となるケースが考えられます。
父親の死亡については、婚姻(1の要件)・認知(2の要件)どちらにも影響し、死亡後に要件が揃うことは一見難しそうですが、認知には、亡くなった父親に対して死後3年は「認知してくれ」という認知の訴えというものを起こすことができる制度があるため、こちらもまた、準正が起こるケースが考えられます。
結局、子、母、父いずれかが死亡した場合であっても、準正が生じる場合が考えられるということになります。
・「婚姻」「認知」という要件が揃うことで、非嫡出子は嫡出子の身分を取得する。
・現在においては、嫡出子と非嫡出子に相続分に違いはなく、相続においては意識する必要はあまりない。
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