被相続人の財産を相続して取得するには、相続人であることが必要です。
相続人とは、相続権を有している者のことをいいます。
民法では、権利を有することができる能力を権利能力と言い、権利能力を有する者は自然人(人)と法人に限られています。そして相続に関しては、自然人のみ権利能力を有することができます。法人は相続人となることはできません。
自然人とは、簡単に言ってしまえば人の事を言い、自然人の権利能力は出生で始まり死亡まで有するとされています。
『民法第3条1項 私権の享有は、出生に始まる。』
出生については、諸説ありますが、生まれた時と理解して良いでしょう。
つまり、権利能力は生まれた時にはじめて有することになります。
被相続人の財産を相続するには、権利を有することができる権利能力と相続権を有していることが必要です。
前述したように権利能力を有するには、自然人の場合は出生していることが必要です。つまり、まだ母親のお腹の中にいる胎児については、出生しておらず権利能力は有しないことになります。権利能力を有しないということは、胎児は相続権を有することが出来ず、相続人になることは出来ないと言えます。
しかし、そうすると胎児の出生を境に相続人、相続分が大きく変化してしまうことになります。例えば、下記のような家族構成の場合、胎児の出生と父親の死亡の時期によっては、相続人、相続分に大きな違いが生じてしまいます。
家族構成・・・父親A、母親B、胎児C、祖父D(Aの父親)、祖母E(Aの母親)
①父親Aが胎児Cの出生より早く死亡した場合(Cは権利能力を有しない)
相続人=母親B 相続分6分の4
祖父D 相続分6分の1
祖母E 相続分6分の1
胎児C 権利能力を有しないため、相続人はならない
②胎児Cの出生後父親Aが死亡した場合(Cは権利能力を有する)
相続人=母親B 相続分2分の1
子供C 相続分2分の1(出生後のため胎児でなく子供と記載)
このような、出生、死亡の時期による変化を避けるために民法には下記のような定めがあります。
民法第886条
1.胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。
2.前項の規定は、胎児が死体で生まれたときは、適用しない。
上記の通り、例外的に相続については、胎児は出生したものとみなします。つまり、母親のお腹の中に胎児がいる場合は、その胎児は相続については権利能力を有する者として取り扱われ、相続人になることができます。
しかし、胎児が出生する前に死亡してしまった場合は、権利能力を有さず、相続人になることが出来ないものとして取り扱われます。
相続以外にも、例外的に胎児の権利能力が認められるものがあります。
民法第721条
胎児は、損害賠償の請求権については、既に生まれたものとみなす。
民法第965条
第886条及び第891条の規定は、受遺者について準用する。
例えば、胎児が出生する前に父親が交通事故で死亡した場合に、原則胎児には権利能力がなく損害賠償請求権を有しませんが、民法第721条の定めにより例外的に胎児にも権利能力を認めています。
ここまで解説してきたように、胎児は、相続人になることができます。
但し、これは民法が例外的に認めているに過ぎません。
原則はあくまで権利能力を有するのは、出生することにより始まります。つまり胎児の権利能力は、相続、不法行為による損害賠償請求権、遺贈を受ける権利に限られ、その他の権利に関して権利能力を有しないことに注意が必要です。
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