平成18年6月1日に会社法が施工されて10年が経過しました。しかし、今もなお旧商法に即したままの会社は日本全国に相当数残されております。旧商法の会社のままでも運営上は特に何らの問題もなく行えるため、新会社法に必ず変えなければいけないものではありませんが、新会社法に即した会社にした方がメリットがあることを知っていただきご自身の会社に役立てていただければと思います。
会社法になった今現在はシンプルかつ柔軟な会社運営が認められるようになり、いわゆる「1人会社」も認められております。つまり、いまは旧商法時代のように自分の親や奥さんを無理やり取締役や監査役に入れる必要もありません。これは、会社法になってから設立した会社に限られず、それ以前の会社にも適用があります。名目上で役員になってしまっていることはありませんか?
これからはできるだけシンプルな会社にすることで余計な手続きや手間をなくして会社運営をしていくようにしましょう。旧商法の会社を、新会社法に即した会社へ変更するためには会社の定款の見直しが必要になります。
ここでひとつ旧商法時代の会社定款をご紹介しながら、どこをなおすべきか、変更することでどのようなメリットがあるのかに着目して解説していきます。
当事務所が以前新会社法の定款へ変更した見直し前のものです。※会社名や役員名などは仮のものへ変更しています。
第1章 総 則 第2条 当会社は、次の業務を営むことを目的とする。 1. 衣料品、衣料雑貨の製造・卸し売業並びに販売 2. 飲食店業・不動産賃貸業 3. 前各号に附帯する一切の業務 第3条 当会社は、本店を神奈川県横浜市に置く。 第4条 当会社の公告は、官報に掲載する。 第2章 株 式 第6条 当会社の発行する額面株式1株の金額は、金500円とする。 第7条 当会社の株券はすべて記名式とし、1株券、10株券、100株券及び500株券の4種とする。 第8条 当会社の株式につき名義書換を請求するには、当会社で定める書式による請求書に取得者が署名又は記名捺印し、これに株券を添えて提出しなければならない。 第9条 当会社の株式につき質権の登録又は信託財産の表示を請求するには、当会社所定の書式による請求書に、当事者が署名又は記名捺印し、これに株券を添えて提出しなければならない。その登録又は表示の抹消についても同様とする。 第10条 株券の分割、併合、汚損等の事由により、株券の再発行を請求するには、当会社所定の書式による請求書に署名又は記名捺印し、これに株券を添えて提出しなければならない。 2 株券の喪失により、その再発行を請求するには、当会社所定の書式による請求書に署名又は記名捺印し、これに除権判決の正本又は謄本を添えて提出しなければならない。 第11条 前3条に定める請求をする場合には、当会社所定の手数料を支払わなければならない。 第12条 当会社は、毎決算期の翌日から定時株主総会の締結の日まで株主名簿の記載の変更を停止する。 2 前項の場合のほか、株主又は質権者として権利を行使すべきものを確定するため必要があるときは、取締役会の決議により60日を超えない期間、株主名簿の記載の変更を停止することが出来る。 3 前項の場合には、その期間を2週間前に公告するものとする。 第13条 当会社の株主及び登録された質権者又はその法定代理人若しくは代表者は当会社の定める書式によりその氏名、住所及び印鑑を当会社に届け出なければならない。届出事項に変更が生じたときもその事項につき同様とする。 第14条 当会社に提出する書類には、前条の規定により届出をした印鑑又は署名を用いなければならない。 第3章 株主総会 第16条 株主総会の議長は、代表取締役がこれに当たる。代表取締役に事故があるときは、他の取締役がこれに代わる。 第17条 株主総会の決議は、出席した株主の議決権の過半数をもって決する。但し、法令の定めによるべき場合及び取締役の選任決議についてはこの限りでない。 第18条 株主は代理人に委任してその議決権を行使することができる。 第4章 取締役、監査役及び取締役会 第19条 当会社の取締役は5名以内、監査役は2名以内とする。 第5章 計 算 第24条 当会社の営業年度は年1期とし、毎年3月末日を決算期日とする。 第6章 附 則 平成5年1月23日 この定款の写しは、当会社の定款に相違ありません。
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この会社の定款と会社謄本をいただいた時に問題点を下記のとおり把握しました。
①会社運営を全くしない甲野太郎の家族(母親・妻・子供)が役員に入っている。
②一度も開催したことのない取締役会が設置してある。
③意味のない監査役の登記が入っている。
④不要な株券発行の定め。
⑤公開会社であるため役員の任期が短い。
現在はシンプルな会社運営が認められていますので使わない取締役会・監査役などの機関は廃止してしまい、経営に参加しない役員は退任。譲渡制限会社の定めを設けて取締役の任期を10年に伸長しましょうと提案しました。これによって、シンプルな会社運営が実現でき、2年ごとにしなければいけなかった取締役の任期を10年に伸ばし定期的な登記の手間と費用を削減することができました。
取締役の任期が2年になっていると、2年ごとに役員を選任しなおして法務局へ登記申請をしなければいけませんでした。
しかし、現在では譲渡制限会社につき会社役員の任期は10年まで伸ばすことが可能になりました。
役員の任期を10年まで伸長することで2年ごとにかかっていた法務局への登記費用数万円を節約することができ手間をなくすことが可能となります。
上記定款の会社を例にして検討すると、手続き的には定款変更と複数の登記申請が必要となります。登記申請は以下のとおり。
[登記申請内容と登録免許税]
・取締役会の廃止…3万円
・取締役と監査役の変更…1万円
・監査役廃止と譲渡制限会社の定め設定と株券廃止…3万円
このように6つの登記申請を行い7万円の登録免許税がかかります
※申し訳ありませんが、企業法務のご依頼は定款等のやり取りが必要なためメール(問い合わせフォーム)でのお問い合わせのみとさせていただいております。