未成年者がいる場合の遺産分割協議書の場合には、特別代理人の申立てをしなければいけないことは以前の記事で書いたとおりですが(以前の記事はこちら ≫遺産分割協議と未成年者)、その申立ての際にはどういった遺産分割協議をする予定なのかを家庭裁判所の方で審査するため、遺産分割協議書(案)を添付して申立てを行うこととなります。その遺産分割協議書(案)の記事についてはこちらに詳細に書いてあります。(≫未成年者がいる場合の遺産分割協議書(案)の見本)
しかし、家庭裁判所の方では未成年者に不利となるか否かについてに重きを置いて受理するかどうかを判断する運用がなされているようです。未成年者が法定相続分以下となる内容の場合には間違いなく家庭裁判所から『回答書』というお尋ね書のようなものが届くと思って間違いありません。この回答書で家庭裁判所が知りたいことは、なぜ未成年者が法定相続分以下となるのか合理的な理由のようです。ということはこの理由さえ間違えなければ受理していただける可能性が十分にあります。他のサイトには法定相続分以下となる場合には却下されると言い切っているものがありますが、それは間違いです。実際に未成年者が不利な内容で受理されているケースはいくらでもありますし、あくまでもやり方次第ということでしょう。この回答書の書き方もその一つです。
こちらに回答書の見本を載せておきますので、これから未成年者に不利になる内容で特別代理人の申立てをしてする予定の方は必ず一読しておきましょう。なお、PDFが開けない方のために質問事項を転記しておきます。
⇒実際に横浜家庭裁判所から届いた回答書.PDF
1.遺産分割協議書(案)によると、未成年者は、遺産分割等により何も取得しないようですが、その理由を具体的に記載してください。
2.遺産分割協議書(案)に記載された不動産の用途を記載してください。(例:自宅、賃貸物件等)
3.遺産分割協議書(案)に記載されている申立人が取得する遺産(預貯金についてもすべて)について、それぞれの評価額を記載してください。
4.遺産分割協議書(案)に記載された遺産以外に遺産はありますか。判明しているものだけで結構ですから、その内容を簡単にお書きください。(債務についても記載してください)
5.上記4に記載した遺産等がある場合、どのように分割する予定ですか。各遺産ごとに具体的にお書きください。
6.特別代理人候補者の方は遺産分割協議書(案)の内容を知っていますか。また、特別代理人候補者は、未成年者が何も遺産を取得をしないことについて、どのように言っていますか。
7.その他参考になることがあれば、ご記入ください。
先程もお伝えしましたとおり、未成年者が法定相続分以下(不利)になる場合には絶対に却下されるわけではなく、それぞれの個別具体的な事情を勘案したうえで決まります。形式的な面よりも実質的な面で見ていただけますので、その事情をどういった方法で伝えるのかが受理してもらうカギとなってきます。つまり、全ての相続関係において事情が異なるわけですから確実に受理させる方法論は確立しておらず、それぞれ個別具体的に検討しながらどのように進めていくしかないのです。これは、実務経験の多さによって結果が左右されてきますので、もし専門家に依頼するのであればどの事務所に頼んでもいいわけではなく、今まで未成年者が不利になる場合の特別代理人申立てをどれだけ経験してきたのかで決めていくのがいいと思います。
※個別具体的な事情によって進め方が異なるのでお電話で「どのような方法で申立てすれば受理されるのか?」「今まで受理させてきた方法を教えてほしい」等の回答はできかねます。