会社は登記事項に何らかの変更(役員が変わった、本店を移転した、商号変更した等)が生じた場合には、2週間以内に管轄法務局で登記申請をしなければならないと定められています。この短い期間に登記申請をしなければ登記を懈怠している状態といってもいいですが、通常は法務局の方でどの会社が登記を懈怠しているかなんてことは知ることができません。
しかし、何らかの登記申請をすることで今までするべきだった登記をしてこなかったことが発覚し(最近では長期的に登記をしていない会社にも過料決定通知が届くことがある)、裁判所から登記懈怠による過料決定を行う流れのようです。
顧問弁護士を多数抱えていたり、法務部を持つような大きな企業ではこのような登記懈怠をしてしまうようなことはありえないかと思いますが、中小企業や小さな家族会社では2週間以内にしなければいけない登記を怠ってしまうことは当然のごとくありえます。
まずは実際の過料決定通知書の見本を見てみましょう。
平成28年(ホ)第12345号 会社法違反事件
過 料 決 定
主 文 当事者を過料 金3万円 に処する。 理 由 当事者は、上記会社の代表取締役に就任していたところ、役員が退任し、法定の員数を欠くに至ったのに、平成28年3月3日までにその選任手続を怠った。 適 条 会社法976条、非訟事件手続法第120条、122条 平成28年5月25日
上記は謄本である。 同日同庁裁判所書記官 東京 太郎 |
これは、役員変更登記を怠ったことを理由として過料の制裁を受けた会社の通知書です。この会社は3万円の過料となっていますが、この金額はそれぞれ会社が怠った登記の内容によって異なってきます。過料を受けた代表者の方々に聞くとおおよそ、数万円から高くとも10万円前後が一般的なようです。
この過料の金額の違いは怠った登記の種類や期間によって異なるようで裁判所が決定することになります。
過料は会社宛に届くものではなく、会社代表者の個人に宛てて届くものです(商業登記規則第118条)。つまり、過料の制裁は受けるのは会社ではなく会社代表者です。
過料決定通知書を見ると「裁判所」「会社法違反事件」といった文言があり、不安に思われる方が沢山いらっしゃるかと思いますが、この過料の制裁については刑事罰ではなく行政罰ですので、会社代表者には前科はつきません。
「定款なんてどこにしまったかわからないよ」なんて言葉が聞こえてきそうですが、そんなこと言わず一度ご自身の会社定款を見直してみてください。なぜなら、定款と過料は大きな繋がりがあるからです。
登記懈怠となる最も多い理由は役員変更です。従前の商法で役員変更は2年毎にしなければいけませんでしたが、会社法になった今はその役員変更の任期を10年まで伸長することが可能となっています(譲渡制限会社の場合)。役員の任期が短ければ登記を怠る確率も増えるものですから、任期伸長する会社が増えるのは当然のことでしょう。
平成18年に会社法が施工されたのでそれ以前に設立した会社の場合、旧商法時代の定款のまま現在まで来ている可能性があります。こちらに当事務所が見直しをした会社の旧商法時代の定款(見直し前)の見本がありますので、自分の会社の定款とこの見本を見比べてみて自分の定款が商法のものか会社法に即している現代のものかご確認ください。
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