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相続した不動産を早期に売却するメリット相続した不動産を放置する弊害と空き家問題

相続した不動産の売却について

 被相続人が亡くなられると相続手続きなど、初めて経験することになるさまざまな問題に直面します。その中で今回は被相続人が遺した相続財産の中で分割方法について悩みやすい不動産の問題とその不動産のより良い活用の方法を紹介していきます。

相続する財産には色々なものがあり、銀行の預金や、証券、信託財産、国債、不動産など様々です。銀行などの金銭に関しては遺産分割によって相続人全員で分割すれば特に問題はないでしょうし、証券や国債も同様に売却により容易に金銭に替えられます。相続財産の中でもやはり一番難しい財産は不動産ではないでしょうか。
 不動産も売却できるとはいえ決して容易に売れるようなものではないですし、被相続人の何らかの想いや思い出がある相続不動産の処理に苦悩する相続人の方は大変多いです。
 被相続人が亡くなられた後にその建物にどなたかが居住される場合は問題ないかもしれませんが、居住者もいないような建物ですと、年月を経過するごとに処分に困ることになります。
 それは土地も同様で管理されていない土地を放置していくことは建物と同様に処分に困ることになるでしょう。
 

相続不動産を放置してしまうことの弊害

不動産を放置することによる一番の弊害はやはり不動産本体の劣化です。特に建物は管理する者がいないと、簡単に朽ち果てていきます。
 相続人の方が管理していくつもりでも、日々状態を保つのは非常に大変な作業になりますし、時間や費用も掛かります。
 さらに、建物においてはその建物自体の状態がもろに売却価格に響くためになんら使用をしていない建物を所有することは最終的に売却時に苦労することになり、劣化による価格下落のリスクもあります。建物がまだ売却できればいいですが売れなかった場合などは解体の可能性も考えなくてはいけなくなりますので、解体費用も更にかかってしまうこともあります。
 また、不動産はただ所有しているだけで固定資産税がかかります。あまり使用することのない不動産に固定資産税だけを払い続けるのは非常にもったいのないことではないでしょうか。


【使用頻度の少ない相続不動産を所有するデメリット】
・毎年の固定資産税の支払い
・不動産本体の劣化を防ぐための塗装などのメンテナンス料
・不動産本体が損壊してしまった場合などの修繕費用
・建物を使用するために土地を賃貸していた場合などは賃借料
・不動産がマンションなどの場合は管理費や共益費など
・最終的に建物が売却できなった場合の解体費用
・劣化による不動産本体の価格の下落
・自分で管理する場合は管理に要する手間や時間

このように相続不動産の中で特に使用しない不動産がある場合は、相当な思い入れのあるものを除き所有していくのには価格下落のリスクもありますし、費用面、そして所有者本人の手間がかかってしまいます。また所有者(相続人)本人が亡くなられた時はその不動産を所有者の相続人が管理処分していかなければなりません。本人、更に次の相続人の負担を減らすためにも使用しないであろう不動産は早めに売却してしまうのが良い選択ではないでしょうか。

 特に建物は経済的な側面からも相続と共に売却してしまった方が劣化による価格の下落による経済的損失も防げます。 

相続した不動産を売却するためにかかる費用(経費)のまとめ

 いくら使用しない不動産と言え土地や建物は他の相続財産に比べて慎重に考えなければならないものです。
 では、逆に相続財産である不動産を売却するために必要となる費用や手間にはどのようなものがあるのか。一般的な費用は以下のものとなります。

<不動産会社に対する仲介料>
 一般的に不動産を売却する場合には不動産会社等に仲介してもらうことになりますので、不動産会社に対する仲介手数料が発生します。
 売却先が決まっていたり、ご自身で探せる場合はいいですが、不動産ですのですぐに売却先は見つかりにくいですし、不動産会社に仲介してもらった方が信用されやすいので購入者が見つかりやすいです。

 不動産売買の仲介手数料は宅建業法で上限は決まっており、また売買成立時に支払う形の成功報酬になっていますので、すぐに費用を工面する必要はありませんし仲介手数料は売買価格から計算しますので、どんなに安い不動産でも仲介手数料が売買価格を超えることはありません。

【宅建業法上の仲介手数料一覧】

売買代金
(消費税を含まない価格)


仲介手数料

200万円以下の金額

5.4%以内の金額(+消費税)

200万円を超え
400万円以下の金額


4.32%以内の金額(+消費税)

400万円を超える金額

3.24%以内の金額(+消費税)


<土地の測量費(戸建ての場合)>
 基本的な不動産の大きさや、建物であるなら形状などは登記簿を見ればわかります。しかし、土地を売買する場合は昨今、特に都市部においては土地の境界を確定した証明を必要とする場合が増えています。
 これは現在の正確な情報を把握することによりトラブルを回避するためにあります。なぜなら、登記簿を見ただけでは隣接する土地との正確な境界は分からないからです。
 境界を確定する測量を『境界確定測量』といいます。
 境界確定測量にかかる費用は土地の大きさによってまちまちですし測量業者によってもかわってきます。数万円から数百万かかる場合もありますので一度見積もってもらう方がよいでしょう。なお、売買には関係ありませんが境界を確定しておくと相続税の物納においては境界確定が必須ですのでその手間を省くことができます。

<相続登記費用>
 後述しますが、相続財産の不動産を売却する場合には前提として不動産の登記を被相続人名義から相続人名義に変更しなくてはなりません(正確には名義変更ではなく相続による移転)。この手続きは省略できませんので必ずかかる費用となります。
 主な費用は司法書士に対する報酬と登記することで発生する登録免許税です。測量費と同様に登記報酬はまちまちで数万円から数十万くらいです。

不動産の価格(固定資産税台帳の価格)×4/1000=登録免許税の価格
 例 2000万円の土地なら×4/1000で、8万円となります。

<その他の費用>
 その他に不動産の売却にかかる費用として建物の解体費用や被相続人の遺品の整理費用、建物内の家具等の処分費用などがあります。
 解体は土地建物セットで相続した場合などで必要となる場合があります。
 基本的に土地は更地が一番高値がつきやすく、土地建物両方セットで売るより更地にした土地だけの方が高く売れる場合があり、その時は建物を解体することもありえます。解体費用の相場はやはりまちまちで建物の形状(木造や鉄筋などの違い)や大きさ、場所、地域などでさまざまでしょう。条件により異なりますが、相場として木造で1坪数万円からではないでしょうか。

 また、その後の売買においては売買契約書を作成しますので印紙税がかかりますし、売買による移転登記の登録免許税の負担を売り主側が負担する場合はその登録免許税の費用もかかります。


 ここまで売却に必要な一般的な費用を見てきましたが、これら費用以外にも自分自身で動く時間や手間が売却にはかかります。こういった費用や手間と、不動産を持ち続ける費用や手間を比較して相続不動産の売却をするか、維持していくかを検討して行ったほうがいいでしょう。

不動産の売却としての前提としての相続登記

 売却に必要な費用のところで説明しましたが、相続した不動産を売却する前提として被相続人名義の登記を相続人名義に変更する必要があります。
 登記には不動産の持ち主が誰であるかを公示する機能と不動産がどのように移転したかを記録に残す役割があり、相続は実質的には被相続人が亡くなることによって相続人に相続財産が移転していますので、その相続による移転の登記しなければなりません。被相続人の名義からいきなり買主にしてしまうと相続による移転が記録されなくなってしまうので売却の前提として相続登記が必要となります。
 ただこれは相続登記をしなければ売買ができないという事ではなく売買契約が成立した後に相続登記をし、次に売買による移転登記をしてもかまいません。
(ただし、通常は売買契約成立から一ヶ月以内に残金決済が行われますので売買契約後に相続登記をしていたのでは全く間に合いません)

□相続登記における基本的な必要書類は下記のとおりです。
1.法定相続分通りの登記
 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本(除籍謄本)、相続人全員分の住民票の写し、相続人の全員の戸籍謄本、固定資産評価証明書

2.遺言がある場合
 検認済みの遺言書(公正証書遺言は検認不要)、被相続人の戸籍謄本(除籍謄本)、当該不動産を相続する相続人の戸籍謄本、当該不動産を相続する相続人の住民票の写し、固定資産評価証明書

3.遺産分割協議の場合
 遺産分割協議書、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本(除籍謄本)、相続人全員の戸籍謄本、当該不動産を取得する相続人の住民票、固定資産税評価証明書

□売買による移転登記に必要書類は下記の通りです
売買契約書(及び領収書)、売主の登記権利証(又は登記識別情報)、売主の印鑑証明書、買主の住民票、固定資産税評価証明書

相続不動産のことをもっと知りたい方はこちら ≫相続お役立ち情報総まとめQ&A

遺産分割協議により相続不動産を売却する際の最大の注意点

 相続による不動産の売却は管理ができない場合に限られません。
 不動産は遺産分割において、価格の変動や実際に売りに出さないと価値がわかりにくいものなので平等に分割することが難しい相続財産です。そういった面で不動産を売却し、金銭にしてその金銭を分割する場合があります。これを相続財産の換価分割といいます。
換価分割をすることによって平等な相続財産の分配ができるようになります。

 この換価分割においては注意しなければいけないことが1つあります。それは遺産分割協議書に換価分割する旨を記載しないと余計な税金が課せられてしまう可能性があることです。
 基本的に換価分割をする場合は手続きや書類作成を相続人全員分するのは時間がかかりますので、かわりに一度代表の相続人名義で相続登記をし、そこから売買による移転登記をすることが多いです。
 実質は相続人全員と買主との不動産の売買ですが、登記簿上は代表相続人の個人名義から買主に移転していることになっています。
 この場合に売買代金を分割すると表面上は代表相続人の所有する不動産を売却しその代金を他の相続人に渡したことになり、金銭の贈与となってしまい贈与税が課せられてしまいます。
 この時に遺産分割協議書に不動産を売却し売却代金を分割する換価分割の記載があれば(便宜的登記名義文言といいます)、それが贈与でない事の証明になります。
 つまり、遺産分割協議書に換価分割を記載しないだけで余計な税金が発生してしまう恐れがあるので注意が必要なのです。
こういった事が起こらないよう遺産分割協議書の作成なども専門家などに相談してみるのもよいでしょう。
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空き家問題/相続した不動産を維持する難しさ

 昨今テレビなどで空き家問題が取り上げられることが増えてきました。空き家となった家の荒廃のスピードはとても速く、修繕不能になってしまうケースも多いです。 相続においても被相続人の不動産を相続した場合に始めは維持管理をしていくつもりでも、その不動産の状態を長年維持していくには非常に手間や費用が掛かってしまいます。また建物に関しては時の経過によって価格の下落は避けられませんし、最悪解体ということもありえます。
 思い入れのある不動産とはいえ永遠に維持していく事は難しいとなると、価値のある時に売却してしまうことも1つの選択肢なのではないでしょうか。

 
 相続における不動産の対策は相続人の立場からだけではなく被相続人の立場からも対策をうつことは可能です。生前使用しない不動産等は売却しておき金銭に代えておけば相続において相続人には手続きなどの負担はかからなくなりますし、また売却にかかる費用等も被相続人側で負担することもできます。

 金銭や証券等と違い、不動産は手続きや費用面、更に家族の気持ちなどもありますので一度専門家に相談してみても良いのではないでしょうか。

当事務所では相続した不動産の換価分割業務を行っておりますので相続登記から相続不動産の売却までを一括してお受けすることが可能です。
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⇒ 次は、相続した遠方の不動産(実家)の売却方法について





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・司法書士よしだ法務事務所代表
・NPO法人よこはま相続センターみつば元代表理事
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司法書士、簡易訴訟代理権認定、行政書士、ファイナンシャルプランナー、宅建士、他多数
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