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相続税の分割払い(延納)相続税を分割払いする方法とは

相続税を分割払いする方法…延納制度

 何度か相続税関連の項目で触れてきましたが、平成27年1月1日以降の相続から相続税の基礎控除額が減額になり相続税が課される相続が増え、また元々相続税が課される相続においても相続税の納税額が増えてしまうという事態になっています。加えて都心での地価の高騰もあり、相続という突発的な事情により突然高額な税金が課されてしまうという状況も増えています。
 高額な相続税を支払えない場合は相続放棄をしてしまえば良いですが、相続放棄をしてしまえば被相続人の財産全てを放棄することになり、先祖から受け継いできた財産なども引き継げなくなってしまいます。こういった場合どうしても財産を引き継いでいきたい場合は相続税を納税するしかありません。

 被相続人が生前に様々な相続税の節税対策をし、かつ被相続人の死後相続人も相続税の減税制度を利用してもなお相続税が発生してしまい、すぐに納税できないような場合は、最後の手段として相続税の分割払い、延納で対応していきます。
 一定の要件を満たせば相続税も分割払い、延納することができます。どうしても被相続人の財産を相続したいが、相続税を期限までに全額納税するのが難しいような場合は相続税の分割払い、延納も検討してみるのも良いでしょう。
今回は、この相続税の分割払い、延納について解説していきたいと思います。

相続税を分割払い(延納)するために必要な要件があります。

 相続税の納税は、相続開始を相続人が知った時の翌日から10カ月以内にしなければなりません。実際相続税額が高額すぎて一度では到底支払えないような場合もそうですが、全く支払えないわけではないが、10カ月以内に相続税金額を用意するのが難しい場合も相続税の分割払いは有用です。
 ただ、相続税の分割払いは選択できると言う制度というよりは、認めてもらうというニュアンスに近いでしょう。実際税務署も簡単には分割払いを許可してくれません。相続税の分割払いの要件は以下の通りとなります。

<相続税の延納(分割払い)の要件>
(1)相続税が10万円を超えること

(2)金銭で納付することを困難とする事由があり、かつ、その納付を困難とする金額の範囲内であること
(3)延納税額及び利子税の額に相当する担保を提供すること。ただし、延納税額が100万円以下で、かつ、延納期間が3年以下である場合には担保を提供する必要はありません。
(4)延納申請に係る相続税の納期限又は納付すべき日(延納申請期限)までに、延納申請書に担保提供関係書類を添付して税務署長に提出すること。

 なお、上記の要件を1つでも満たせば良いのではなく、全ての要件を満たす必要があります。また要件にも書いてある通り、延納(分割払い)をする場合は利子が掛かる事にも注意してください。一度に相続税を納税する場合より分割により納税する場合の方が相続税の総額が多くなります。
 要件の(2)にあたる部分が問題で困難な事由と認められるかの判断は税務署の裁量となるので、申請すれば絶対に分割払いが認められるとは限りません。また、延納(分割払い)の要件でもある担保の提供ですが、この担保も提供できる財産が限定されていますので注意が必要となりますので注意が必要です。

<相続税の延納(分割払い)で担保として提供できる財産>
(1)国債及び地方債
(2)社債その他の有価証券で税務署長が確実と認めるもの
(3)土地
(4)建物、立木、登記される船舶などで、保険に附したもの
(5)鉄道財団、工場財団など
(6)税務署長が確実と認める保証人の保証

※提供された担保が適当ではないと税務署長に判断された場合は、提供された担保の変更を求められる可能性があります。
 なお、提供する担保は被相続人の相続財産に限らず、相続人の固有財産や共同相続人、第三者が所有している財産でも可能です。 

<担保提供関係書類の提出期限>
 担保提供関係書類は原則延納申請(分割払いの申請)の時に一緒に提出しなければなりません。しかし、一緒に提出することが困難な場合は担保提供関係書類提出期限延長届出書を提出すれば、1回につき3カ月を限度として最長6カ月まで担保提供関係書類の提出を延長できます。 

<延納許可(分割払いの許可)が出るまでの審査期間>
 申請書が提出されると税務署長は、要件を満たしているか審査し、延納申請期限(分割払いの期限)から3カ月以内に分割払いを許可するのか、または却下するのかの結果を出します。なお、担保などの提供状況によっては、許可または却下は最長6カ月延長される場合があります。

相続税を分割払い(延納)できる期間とその利息はどれくらい?

 相続税を延納(分割期間)できる期間及び利息は、相続した相続財産の不動産の割合によって決まります。期間及び利息は下記の通りです。

区分

延納期間
(
最高)

延納利子税割合
(年割合)

特例割合
(年割合)

不動産等の割合が75%以上の場合

動産等に係る延納相続税額

10

5.4

1.3

②不動産等に係る延納相続税額(を除く)

20

3.6

0.8

計画伐採立木の割合が20%以上の計画伐採立木に係る延納相続税額

20

1.2

0.2

不動産等の割合が50%以上75%未満の場合

動産等に係る延納相続税額

10

5.4

1.3

⑤不動産等に係る延納相続税額(を除く)

15

3.6

0.8

⑥計画伐採立木の割合が20%以上の計画伐採立木に係る延納相続税額

20

1.2

0.2

不動産等の割合が50%未満の場合

一般の延納相続税額(及びを除く)

5

6.0

1.4

立木の割合が30%を超える場合の立木に係る延納相続税額(を除く)

5

4.8

1.1

特別緑地保全地区内の土地に係る延納相続税額

5

4.2

1.0

計画伐採立木の割合が20%以上の計画伐採立木に係る延納相続税額

5

1.2

0.2


※特例割合については平成27年1月1日現在の延納特例基準割合で計算しますので、延納特例基準割合に変更が生じている場合は必ず管轄の税務署で確認してください。


相続税の分割払い(延納)から物納への変更もできます。

 相続税の延納(分割払い)の許可を受けた場合で、支払いの途中で相続税の支払いが難しくなってしまった時は、申告期限から10年以内に限り、分納期限が未到来(未払い分)の税額部分について延納から物納に変更することが出来ます。
※物納とは・・・物納とは相続などにおいて相続税が高額になってしまい相続税が払えないような場合に相続財産自体を納税してしまう方法です。

 ここまで解説してきたように相続税を一括して支払えない場合は、相続税を分割払い(延納)することができます。相続税の延納制度は利子の税率や延納期間を見ても分かるように、基本的には相続財産が不動産ばかりで金銭がなく相続税を一括で納めることが難しい場合に使う制度と言えます。
当たり前ですが相続税を延納すれば利息がかかり一括で納税するより相続税は高額になります。よって金銭や金銭化しやすい相続財産の場合は相続税の延納はせず一括で納税してしまった方が良いでしょう。
 また、相続税が実際に課される前の段階での対策として相続人は相続税が減額できる制度がないかしっかり確認した方がよいでしょう。これは被相続人の生前の相続税対策にも言える事であり、被相続人は相続人に出来るだけ相続税が掛からないように生前からしっかりとした相続税対策をしていた方が良いでしょう。
相続には様々な税対策がありますので、相続税で悩んでいるのなら専門家に相談した方が簡単に解決します。

相続税のことをもっと知りたい方はこちらへ ≫相続お役立ち情報総まとめQ&A

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